すみだセレクション(2009(平成21)年度)

この地域には素晴らしい財産がある、信頼のイメージに何を付加するかが2012年への課題──編集長座談会

高い技術に、オリジナリティ、モダンさ、デザインを──すみだの商品に必要なものは

すみだの名所「向島百花園」にて
(墨田区東向島三丁目/東武鉄道伊勢崎線「東向島」下車 徒歩約8分、京成電鉄押上線「京成曳舟」下車 徒歩約13分/http://teien.tokyo-park.or.jp/contents/index032.html

● 婦人画報・出口編集長:すみだはファッション産業が盛んであると聞いたが、今回はファッション関連の製品はそれほど選ばれなかった。
すみだは大都市東京のなかにあり、すぐ近くに銀座などがあるのに、もうひとつ何かが足りない。技術は優れているのに、スゴく惜しい。東京にいながら、時代に求められているデザイン的感性や企画力が取り残されている面があるように思った。

● PEN:安藤編集長:すみだは、例えばレザーのものは有名だし、情報としては知っているが、欲しいかというと、ちょっと野暮ったいものも多いかな、と思った。世界にハイエンドのものからいろいろある中で、すみだのものを選んでもらうためには、オリジナリティに欠けている面があると思う。技術があるのは分かるが、うまくモダナイズされていないのが、もったいない。

● 朝日新聞・笠原東京総局長:すみだの企業は、歴史とかヒューマンストーリーとして、読者受けするニュースになるものはもっていると思うが、デザイン的に華やかさとかに欠けている。歴史が長いのに対して、アイデアがついていってないのかもしれない。技術はしっかりしているので、デザイナーを公募してみるとかするとよいのではないか。

● 婦人画報・出口編集長:その点、福井県の鯖江市とかはうまくやったと思う。ブランド品と対抗できる良品というイメージで、でもデザインはカッコいい。鯖江のメガネはおしゃれだと思う。

● サライ・河内編集長:「サライ」の読者は年齢層が高いが、すみだはその辺がお客さんなのだろう。モダンにしすぎて「とんがる」と、お客さんが離れていくので、そこが知恵の出しどころだと思う。今支持しているお客さんが離れないようにしながら、どこにモダンな要素を入れていくかというのは大変だろうけれども、その工夫は楽しいことだと思う。革製品の小物なども、ルイヴィトンが村上隆氏を使って話題になったように、うまくやれば面白いものができる可能性がある。

● 婦人画報・出口編集長:「婦人画報」の読者はお着物をお召しになる方が多い。拝見していると皆さん着物にエルメスのバッグなどを持たれている。
そういう意味で、日本のバッグブランドが、着物にも合う、もっと素晴らしいものを作ってくれないかとかねがね思っている。扇子がぴたっと入るとか小ぶりで、テーブルの上に置いてもサマになるとか。シンプルで上質なバッグ。例えば江戸木箸のような永遠の形みたいなのができないかと思っている。その点、今回は入れなかったが、革のがま口で、とても可愛いものもあった。

● 朝日新聞・笠原東京総局長:すみだが生誕の地である葛飾北斎のモチーフを使った商品も多いが、今となっては有名すぎて買う気にならない場合もある。

● 婦人画報・出口編集長:同じ北斎でも、使い方をひとひねりすれば、面白いものができるのではないか。

「北斎漫画」の暖簾がかかる「枕橋茶屋」にて
(墨田区向島1-2-1/東武線・銀座線「浅草」・都営浅草線「本所吾妻橋」9分/http://makuracha.exblog.jp/

「すみだは頑張っている」、この感動を味わってもらうために──これからのすみだの可能性

● PEN:安藤編集長:スゴくアイデアがあり、今という時代のニーズを考えている人たちと、それがうまくできていない人たちに差ができているように思った。現在はうまくできていなくても可能性はあるし、どこかと組んだりして、自分たちの能力を再発見できたら、もっと楽しくなるのではないか。

● 婦人画報・出口編集長:モノを売る、作る、発信するのがスゴく難しい時代だ。位置づけがはっきりしたものしか売れない。ユニクロやH&Mのような大量生産で安いけど新しくてカッコいいものか、逆に最高品質で由緒あるものの両極どちらかしか売れない。すみだの会社は由緒正しさ、江戸のイメージ、老舗イメージなどで売っていくべき。その業界を長く支えてきた地道な信頼のイメージをどの会社も持っていることが、他の地域よりすごく強い部分だ。未来を見て、そこに何を付加してくのかということだと思う。
墨田区はスゴく頑張っていると思う。感動した。日本の地方の取材で感極まることがあるのだけれど、こんな近くにこういうところがあるとは知らなかった。2012年には多くの人がすみだに足を運ばれると思うが、私のような感動を味わって、すみだが好きになればいいなと思った。

● サライ・河内編集長:この地域には素晴らしい財産がある。後はプロデュース力とPR力が課題。そんなにお金をかけずにどんな風にやったらと知恵を絞ればいいと思う。

● DIME・廣田副編集長:様々な商品を目にした感想として、海外生産が当たり前の時代に、MADE IN JAPAN、すみだのものづくり・職人の技を十分に感じられた。今後も東京スカイツリー開業を控えた墨田区の文化・産業に注目していきたい。

● 朝日新聞・笠原東京総局長:墨田区=錦糸町の繁華街というイメージが強かったが、例えば、その一角に江戸切子館という工房ショップのようないい店があるとは知らなかった。すみだは奥が深い。
後は子どものファンを作ることも大切。例えばポケモンやドラえもんのような、ゲームやアニメのキャラクターを使うとか。それによって若い家族連れが来る。
以前、長野県の小布施町がブームになったことがあったが、その際は街全体が盛り上がっていた。そのためには、地域がお互いに協力できるような横串が必要。世界一のタワーができることはチャンスだ。そのためには、外国人の目も意識すべき。

「すみだ江戸切子館」の工房にて
(墨田区錦糸2-6-5(廣田硝子株式会社内)/JR・東京メトロ半蔵門線「錦糸町」4分/http://www.edokiriko.net/

● サライ・河内編集長:タワーができたときには、その回りの飲食店がどこにでもあるチェーン店ばかりでは魅力がない。お店選びには細心の注意と努力が必要。

● 婦人画報・出口編集長:都心に既にある六本木などのような開発エリアにならないでほしい。完全に食傷気味。大体どんな店が入るか分かってしまう。そうではなくて、こんな老舗があったのかというようなお店のセレクションだといい。

● サライ・河内編集長:例えば今回取材した商品や、すみだならではの食品を置いたセレクトショップがあるといいと思う。

以上