SUMIDA MODERN

INTERVIEW

Q. 区長さん、
墨田区の魅力ってなんですか?

町を歩けば「区長さん!」と声がかかる。墨田区生まれ、墨田区育ちの山本 亨区長は、この町を誰よりもよく知り、愛してやまない人だ。60 年間暮らす"すみだ"とはどんな町なのか? 行政の長として、ひとりの"すみだラバー"として、変わらぬ町の魅力と未来に描く姿を聞いた。

Photo / Tada(Yukai) 
Text / Yuriko Kobayashi

2021.8.20

- 生まれも育ちも墨田区の区長にとって、墨田区はどんな場所ですか?

山本区長(以下、山本):私は、2021年でちょうど生誕60 周年なんです。

- おめでとうございます!

山本:錦糸町の病院で生まれてね、今日に至るまで墨田区を離れたことがない。ここ以外の町で暮らしたことがないんです。区長になる以前からこの町が大好き。だからこそ、この町をもっとよくして、ここに住んでよかったなと思える場所にしたいんです。

- 子ども時代の思い出で強く印象に残っていることはありますか?

山本:自宅の近くに商店街があって、角に揚げもののお店があったんです。揚げたてのコロッケを新聞紙に包んでもらって、それを食べるのが好きだったな。とにかく元気な商店街で、ひとりで歩いていても「おお、元気か?」って、おばちゃんやおじちゃんが声をかけてくれて。それが日常でした。

- 下町ならではの風景ですね。

山本:自分の家も商売をやっていましてね、おせんべいとかあられを売るお店。向島のど真ん中にあって花街が近かったので、夜9時頃だったかな、お客さんのお土産用に詰め合わせの注文が入るんです。うちは自分の下に弟妹が3人いて両親も忙しかったので、私が配達に行くこともありました。商品を唐草模様の風呂敷に包んでね、料亭の勝手口から入るんです。そしたら「亨ちゃん、ご苦労さん」ってね。

- みんなが顔見知りだった。

山本:町の大人、みんなに育ててもらったんです。毎日が楽しくてね。大学は渋谷区だったけど、墨田区から通いました。ここ以外に住みたいとは思わなかったから。今は商店街も減って、東京スカイツリーができてからはタワーマンションがずいぶん増えましたね。

- 寂しいですか?

山本:うーん、寂しくないと言ったら嘘になるかもしれませんが、それでも向島のあたりを歩けば今でも芸妓さんたちがお稽古する三味線の音が聞こえたり、両国界隈では日常的にお相撲さんの姿も見ます。あとは今でも町内会のお祭りが盛んだったり、昔のいいところが残っている部分はあります。昔と変わらず面白い町ですよ。

区役所から歩いてすぐの蕎麦屋「琴富貴(ことぶき)」は行きつけのひとつ。「最近どうですか?」「ワクチン打てましたか?」など店主の近況を聞くことも忘れない。「外でごはんを食べると、色々な声が聞けるでしょ。それを職員に伝えるんだけど、リクエストし過ぎて職員たちには苦労かけてるかもしれないね」
剣道の腕前は教士七段。運動不足解消と気分転換に竹刀を振ることもしばしば。

Q. 区長さんが目指す墨田区はどんな町なんですか?

- 時代とともに町が変化していくことは当然だし、必然でもあると思います。そんななかでも、変えてはいけないと考えている部分はありますか?

山本:それはやっぱり「地域とのつながり」だと思います。家族はもちろん、町の先輩後輩、町会長・自治会長さんを中心とする地域とのつながりというのは長い時間をかけて培われてきたこの町の財産です。「ものづくり」に関しても、様々なつながりによって伝統や技術が継承されてきたわけですから、その部分は大切にしていかなきゃいけない。今後は人が集まりやすい公園を整備したり、町の中でふと隣に座った人同士で会話が生まれたりするような、みんながくつろげて、つながりが生まれやすい町にしていきたいと思っています。

「墨田区で好きなものは何ですか?」との質問には「和菓子はどれも最高だよね」と好物の「山田家」の人形焼をぱくり。愛用している印鑑ケースは墨田区で革小物を手づくりするサクラワクスの〈TOKYO GA-MA〉。

- 昔ながらの下町人情を現代に合った形で継承していくんですね。

山本:公園をつくるとかハード面も大切ですが、何より大切なのは行政を預かる私たちの心持ち。私は土曜の会合なんかは自宅から自転車で区役所に行くこともあるのですが、信号待ちをしていると区民の方から「おお、区長さん」なんて声をかけていただくことも多いんです。「コロナのワクチン打ったよ、ありがとう!」なんてね。

- 墨田区は東京23 区で、いち早くワクチン接種を始めましたものね。

山本:この間は、町で出会った区民の方に「ワクチン始まったのは嬉しいけど、会場に駐車場がないんだよ!」とご意見をいただきました。

- すごいタメ口ですね(笑)。

山本:そのフレンドリーさが"すみだの人"のいいところです。こちらの耳が痛くなるような意見もズバッと言ってくれますし、逆の立場であってもそういう意見をちゃんと聞く。私もそうした区民のみなさんからの声は職員たちに逐一伝えるようにしているのですが、職員もしっかりと耳を傾けて改善に向けて動いてくれる。区民のみなさんの声が行政に行き届くこと、それは何よりも大切なことですから。

Q. 区長さんが考える「未来のものづくり」タウンとは?

-「すみだモダン」は、ほかの自治体からも注目を集めていますね。

山本:まず「すみだモダン」という言葉がいいよね。子どもの頃から住んでいますから、職人さんがつくるものも、食べものも、とにかく質がいいことは知っています。せっかくいいものがあるんだから、しっかりPR していかないともったいないですからね。

-PR はなかなか難しい課題ですね。

山本:はい、でもそこはいい意味で"おせっかい"文化がある墨田区。関わった人たちが職員以上に熱くPR してくれたり、人の縁に助けられて、10 年間でたくさんの方々に参画していただきました。区外から墨田区に拠点を移す事業者さんも増えて、嬉しく思います。

「町に出ていかないと、区民のみなさんが困っていることに気が付けないからね」と、時間があれば町を歩く。区民にもお馴染みで、マスクを着けていても「区長さん!」と声がかかるほど。ヒロカワ製靴の革靴など、墨田区の事業者が手掛けるプロダクトを積極的に日常に取り入れ、自分の言葉で魅力を伝えている。

- 時代が変わっても墨田区は「ものづくりのまち」なんですね。

山本:墨田区は今も昔も「新しいことをやりたい」という人々のフィールドです。伝統工芸や金属加工、メリヤスなど様々なノウハウが揃っていますから、それを活用して積極的に新しい挑戦をしてほしい。スタートアップ企業が活躍したり、異業種同士が連携したりして、これまで不可能だった社会課題を解決するとか、無限の可能性がある。産業発展はもちろん、持続可能な社会をつくるアイデアや技術が生まれる町が実現したら素晴らしいことです。

- 最先端のものづくりタウン!

山本:墨田区は2021 年度、内閣府が選定する「SDGs 未来都市」と「自治体SDGs モデル事業」の選定を受けました。東京23 区では同年度、唯一のダブル選定ということで、これを機に、"未来のすみだの姿"がよりはっきりと描けるようになってきました。

SDGsは世界規模の取り組みのように思えますが、基本となるのは「人」。墨田区は「ものづくりのまち」として発展し、人々の生活を豊かにしてきました。そうした技術を持つ人々を後押しすることは、地域の課題解決と経済発展を同時に実現することにつながり、また人々の暮らしをいいものにしていく。そういういい循環をつくるのが私の夢なんです。

山本 亨

1961 年、東京都生まれ。墨田区向島で生まれ育つ。青山学院大学経済学部経済学科卒業。2007 年から8年間、墨田区議会議員を務める。2015 年に墨田区長に就任し、2019 年に再選、現在に至る。特技は剣道(教士七段)。座右の銘は「背私向公(はいしこうこう)」。

SPECIAL BOOK

すみだモダン

手仕事から宇宙開発まで、
"最先端の下町"のつくり方。

ONLINE STORE

STYLE STORE × すみだモダン

オンラインストアで購入できる
「すみだモダン」のアイテム

このページをシェアする