SUMIDA MODERN

COLLABORATION

あの名品はこうして生まれた!

"新感覚のニッキ飴"

宮川 克巳[宮川製菓] ×
名児耶 秀美[アッシュコンセプト]

宮川製菓は手づくりで昔ながらの飴を製造する、日本でも数少ない飴工場。大量生産で安価な飴に押され、経営が立ち行かなくなっていた2014 年、「ものづくりコラボレーション」事業に参加。自社のシグネチャー商品だったニッキ飴を現代版にアレンジし、ヒット商品を生み出した。

Text / Saori Takagi

2021.8.20

宮川 克巳

宮川製菓代表。1957 年の創業以来、一貫して昔ながらの手づくりにこだわり、手鍋の直火炊きによる水飴と、素材本来の味わいを大切にした飴菓子を製造する。暑さや寒さに合わせて糖度を変え、調子を見極めてつくる飴は、大量生産品にはない豊かな風味。

名児耶 秀美

アッシュコンセプト代表取締役。デザインプロデューサー。デザイナー・ペア・シュメルシュアのアシスタントを経て、髙島屋宣伝部などで経営・商品開発・デザイン戦略などに携わる。生活者とデザイナーが楽しめるものづくりを目指し、デザイナーとのコラボレートブランド〈+ d〉を世界に向けて発信する。

宮川:私と先生の出会いはですね……。

名児耶:いやいや、「先生」はやめてくださいよ(笑)。

宮川:いえいえ、先生です。区の説明会で先生の講演を聞きましてね、世の中には天才がいるんだと思ったんです。当時私はデザインをいかがわしいものだと思っていまして。だって何の生産もしていないわけじゃないですか。

名児耶:はい、おっしゃる通り。

宮川:でも先生がつくってきた商品の話を伺って、そのどれもがつくる側と買う側の間に立って、そこをうまくつなぐ「触媒」のような存在だなと感じたんです。ただカッコいいものをつくるのではなくて、売ること、その先のことまで考えていらっしゃる。これがデザインなのだとしたら、ぜひお力を貸していただきたいと思いました。手前どもは昔から手づくり飴をやってきましたが、本当に売れなくて、売れなくて……。もうダメだなと半分諦めていたんです。そんなときに先生に出会って、ぜひもっとお話を聞きたいと思いましてね。それで区の方にお願いして、先生にお手紙を渡していただいたんです。

名児耶:ラブレターでしたね。僕は生まれも育ちも墨田区なんですけど、そういえば小さい頃はいろんなところでべっこう飴を売ってたり、飴って身近だったよなぁって、お手紙を読んで思い出したんです。昔は150 社くらい飴屋さんがあったけど、今は宮川さんのところだけだと知って、この人がやめちゃったら墨田区から飴屋がなくなっちゃうんだなって。それで、とにかく現場に行ってみようと。

宮川:手前どもはソーダ飴とか、色々な種類をつくっているのですが、先生が工場にいらしたときに「一番大事にしている飴は何ですか?」と聞かれたんです。

名児耶:「ニッキ飴は一番得意としていて、おいしくつくれる」って言いましたよね。絶対に自信があると。そういえばニッキ飴って何十年も舐めてないよなぁと思いつつ口に入れてみたら、すごくおいしくて、ずっと舐めていられるんじゃないかってくらい。これはただものじゃないぞと。

宮川:そのとき先生、「ニッキって何でしたっけ?」とおっしゃって。

名児耶:そしたら「シナモンですよ」って。どうりでどこかで食べた味だなと(笑)。宮川さんはプロだから、どんな味の飴でもつくれるでしょうけど、でも本当に根っこにあるものって絶対あるじゃないですか。やっぱりそれを宮川さんの顔としてやるべきだなと思ったし、あとは「ニッキ」だと外国の人には馴染みがないけど、「シナモンキャンディー」なら世界中にあるでしょう。総合的に、これはいけるんじゃないかと思って。それでニッキ飴で世界一になりましょうよって。

宮川:先生から、ニッキ飴で色々種類がつくれないかと提案があって、すごく面白いなと思いましたね。

名児耶:できるのかな?と思って聞いたら、「それはもう簡単ですけど」って。手づくりでやってるから、どんなふうにでもできるんですよね。そこがまた宮川さんの強みだから、そこは存分に生かしましょうよと。それでマイルドとミディアムとストロングの3種類をつくったわけです。

宮川:このストロングが本当に辛くて、私も全部は食べられないんですよ(笑)。「先生、こんなもん売れないですよ」って言ったら、「大丈夫だから、やってみよう」って。

名児耶:カプサイシンまで入れちゃったからね(笑)。でも本心で売れると思ったんですよ。例えば車を運転してるときとか、これの匂いを嗅いだだけで目がパッと覚める。僕は結構この刺激が好きなんですけどね、おいしいですよ。

宮川:あとすごいなと思ったのはパッケージですね。3種類あるんですけどコスト面を考えてくださって、同じ袋にシールを貼って分類するという。こういうところまで考えていただけるのは、本当にありがたかったです。

名児耶:あとポイントは、ここにちゃんと「Cinnamon Candy」って書いてあること。墨田区の東京ミズマチにある僕のお店「KONCENT- コンセント」でも外国の方が「シナモンね」って言って買っていくんですよ。

宮川:先生のご紹介でミュージアムショップに置いていただいたり、手前どもでは決して考え付かない販路を開拓してもらえたのもよかったです。

手づくりで製造される〈やさしさ しびれる ニッキ飴〉。若い世代や外国の人々にもアプローチできるよう、「マイルド」「ミディアム」「ストロング」の3種類を展開。「マイルド」はニッキの量を減らして気泡を混ぜ、柔らかい口溶けに。「ミディアム」は昔ながらの風味を生かした。赤唐辛子入りの「ストロング」は刺激と驚きのある風味。2014 年の「すみだモダン」認証商品。

名児耶:ニッキ飴は軌道に乗ったんだけど、ひとつ問題が出てきたんですよね。それは「夏」。

宮川:はい。飴って、気温が25℃を超えると売れなくなるんです。最近は東京も5月くらいから暑くなりますので、1年のうちの半年くらいは飴が売れづらくなってしまう。そういうことを先生に相談していたら、飴づくりで培った技術を生かして、何か飴以外のものをつくろうとなりまして。

名児耶:そこで目を付けたのが、きなこ飴です。

宮川:きなこと黒糖を鍋で丁寧に煮込んでつくる飴です。

名児耶:その煮込みの技術を使って、飴でナッツを煮込んだらどうかと。例えばクルミを黒糖で煮込んだり、アーモンドをジンジャーで煮込んだり。コクと風味が格段によくて、さすがはプロの技術だなって。

宮川:私もだんだん飴の技術って、こういうことにも使えるのかと分かってきたので、今度は夏場に照準を合わせて、何かおつまみ系をやってみようかなと。次は大きいトウモロコシの粒みたいな"ジャイアントコーン"に味を付けてみたんです。周りにお砂糖がついている飴がありますでしょう? あれは「ざら玉」というのですが、飴に砂糖をくっつける「ざらつけ」という飴づくりの技術を応用しました。

名児耶:これがね、くっつきすぎっていうくらい、くっついてるんですよ、味が。トマトとかカレーとか色々つくったんですけど、普通、豆屋さんとかがつくろうとすると、粉を振りかけるだけだからボロボロと落ちちゃうでしょ。でもね、ざらつけの技術を使うと落ちない。すごく濃厚な味になるんです。この濃いめの味がビールによく合うってことで、夏場に人気が出たんです。まあ最初、宮川さんが僕のところに持ってきたときは「なんで飴屋がコーンなの?」って言いましたけど、食べてみたら「あ、うまい!」って(笑)。

宮川:とにかく夏場をしのぐには、おつまみだと思って。

名児耶:そこが実は一番大事なところで、まず最初にその人が一番得意な技を見つけて、一緒に商品をつくるでしょ。じゃあそこから先はどうするのか。結局成功する人って、僕たちが次に何か提案するのを待ってないんですよね。こういうことがやりたいから、ちょっと力貸してよって、そのくらいの感覚、やる気がないと、ひとつ商品をつくっても続かない。だから宮川さんが自分で考えて、「こんなのつくってみたけど、どうかな?」と持ってきてくれたのは嬉しかったし、こういう人と仕事がしたいんだよって思ったんです。だからこそ10 年も関係が続いてる。

きなこ飴の技術を使って開発したナッツ菓子も人気に。ジャイアントコーンにカレーやトマト味の粉をまぶしたおつまみが夏場の売り上げを支える救世主に。濃い味でビールによく合い、止まらないおいしさ。

宮川:でもまあ、ひとくちに「新商品をつくる」と言っても、手前どもは本当に零細なので、開発のための資金が潤沢にあるわけじゃないんです。そこを墨田区さんが補助してくださるのは本当にありがたい話で。挑戦する場、土俵に上げてもらえるというのは感謝です。

名児耶:僕はまだまだ儲けてほしいと思ってますよ。宮川さんの工場をファクトリーショップみたいにして、製造工程を見学しながら買える場所にするなんてどうですか?

宮川:それは夢のような話ですね、いいですね。

名児耶:そのときはぜひ、僕にデザインさせてくださいね!

宮川製菓

東京都墨田区業平1-3-1
Tel.03-3622-2795

Photo / Taro Oota(A, B)

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