SUMIDA MODERN

CROSS TALK

「すみだモダン」の仕掛け人に聞く

デザインとコピーに込めた
「すみだモダン」の夢

廣村 正彰[Hiromura Design Office]×
三井 浩・千賀子[三井広告事務所]×
鹿島田 和宏[墨田区役所]

「すみだモダン」の立ち上げから10 年経った2021 年、ブランドロゴマークとキャッチコピーの刷新が行われた。節目を迎え、新しい一歩を踏み出す新生「すみだモダン」。新マークとコピーに込められた想いとは?

Photo / Taro Oota 
Text / Yuriko Kobayashi

2021.8.20

鹿島田:「すみだモダン」が新たなスタートを迎えるにあたって、すみだ地域ブランド推進協議会においてもロゴとキャッチコピーを刷新したいとの意見がありました。そこで、これまで「すみだモダン」のデザインやコピーを担当してきた廣村正彰さんと、三井浩さん・千賀子さん夫妻にリニューアルをお願いしました。お仕事をご一緒させていただいてから、かれこれ10 年ですね。

三井(千):私たちはずっと墨田区に広告事務所を構えていますので、「すみだモダン」の仕事をお手いさせていただくことになったときは、すごく嬉しかったんです。これまでの仕事を通して墨田区の魅力は知っているつもりでしたけど、取材を続けるうちに、想像以上に墨田区にはものづくりに情熱を持つ人たちがいることを再発見しました。

「すみだモダン」にまつわるカタログなどの制作を担当してきた4人。左からデザイナーの廣村正彰さん、墨田区役所の鹿島田和宏さん、コピーライターの三井千賀子さん・浩さん。新しいロゴとコピーをつくったのもこのメンバー。

三井(浩):地域ブランド戦略のスタート時の骨組みは、大手広告代理店がつくったものでした。そこに私たちが参加すると決まったとき、これまでほかの仕事でもよく組んできた廣村さんにアートディレクションをお願いしたいと思いました。"すみだのものづくりの魅力"を世界に発信するには、絶対に廣村さんの協力が必要だと。

廣村:私は当時、ちょうど「JAPAN CREATIVE」という日本の匠と世界的デザイナーの協働プロジェクトを立ち上げた時期でした。お話をいただいたとき、一からものを生みだす事業者や職人たちの想いや技を可視化してブランディングしていく「すみだモダン」の取り組みは素晴らしいと思い、お手伝いさせていただくことにしました。

三井(千):初めは「すみだモダン」の認証商品を掲載したカタログをつくりたいということで、この4人で集まったんですよね。それをきっかけに、どんどん具体的な話が進んでいきましたね。

鹿島田:「すみだモダン」のカタログでは、よくある"自治体っぽい"制作物ではなく、もっともっと地域に入り込んで、人の暮らしやぬくもり、手仕事の温度感みたいなものを魅力的に伝えたかったんです。

三井(浩):表紙のビジュアルも「古くからある墨田区の魅力、隅田川とか江戸のイメージを生かしつつ、手づくりのニュアンスも入れてください」とか、色々なオーダーをいただきました。毎年キービジュアルを変えようということにもなって、廣村さんはご苦労されたかと思いますが、毎年変化するという部分が「すみだモダン」の個性として見えるようになって、すごくよかった。

廣村:それぞれの事業者の取り組みを知れば知るほど、墨田区は地域ブランドが活性化していくベンチマークになれるという想いが強くなりました。僕らはデザイナーなので、デザイン的な表現としてそこをきっちり提案していかなくちゃいけない。いつも襟を正して取り組んでいるような感じでした。

三井(千):「手仕事」というのも、つい安直なイメージに落とし込みがちですが、実際にものをつくっている方々の想いを聞くと、「誰かにとって、もっといいものをつくりたい」という「人を想う気持ち」がベースにあるんですよね。それはものづくりの原点と言えるもので、そういう根元的な部分をデザインやコピーでどう表現していくか。そこに墨田区の個性が表れると思って、これまで取り組んできました。

鹿島田:そういう考え方は新しいコピーにも色濃く出ていますね。

三井(浩):ステートメントを刷新するにあたり、10 年間使ってきた「あたらしくある。なつかしくある。」というキャッチコピーの考え方と、今後10 年の「すみだモダン」が目指す方向については、地域ブランド推進協議会でも活発な議論があったと伺っています。

鹿島田:歴史ある"すみだのものづくり"をデザインや考え方で現代化させていくというのが、過去10 年の「すみだモダン」でした。しかし2015 年に国連でSDGs が採択され、誰も取り残すことのない持続可能な社会へという方向へ世界は動き始めました。墨田区内でもアストロスケールのように宇宙ゴミを回収するシステムをつくる事業者や、山口産業のようにアニマルウェルフェアに配慮した皮革製造を行うなど、SDGs を意識した取り組みを積極的に行う事業者も増えてきました。時代が大きく変わっている今だからこそ、「なつかしい」というのを一度払拭して、その次に行くぞっていう感じを出したほうがいいかなと思ったんです。

三井(千):ステートメントでも「いまだけではない、100 年先のここちよさを。自分だけではない、より多くの人のよろこびを。」としたのは、まさにそういう意味です。

三井(浩):人が人を想い、理想を思い描いて生みだすものこそが時代を動かしていく。「すみだモダン」はその原点から未来づくりを目指していくということを、広がりのある言葉で表現するにはどういうものがいいのかなと。それで考えたのが「こころ、ゆさぶる。」というキャッチコピーでした。

鹿島田:これまでは既存商品の認証が主な事業でしたが、これからは事業者の取り組みや情報発信、それらが社会に与える影響も含めて、全部が「すみだモダン」であるということです。まさにこの先、目指すところを言葉にしていただいたように思っています。ロゴもこの考え方を基に刷新していただきました。

「すみだモダン」の新しいブランドステートメント。

廣村:今までのロゴは隅田川の流れと墨田区の「S」を表したもので、その考え方は間違っていないと思っていたんです。隅田川の豊かな水資源や運河としての役割によって、"すみだのものづくり"は培われてきました。新しいロゴは、その隅田川の水の流れをシンボル化しています。緩やかな曲線と勢いを感じる先端は、ものづくりの原点と、新しい未来への挑戦を意味しています。さらに「S」の文字に見えることで、「すみだモダン」の頭文字として認知されやすいという効果もあります。

鹿島田:このデザインを見たとき、「今まで見たことのないロゴだ!」と感じました。川でもあるけれど、魂のようにも感じる。色も絶妙なブルーですね。墨田区ゆかりの葛飾北斎が多用した青は「ベロ藍」と呼ばれていますが、この新しいロゴの青はぜひ「すみだモダンブルー」として広く認知されたら嬉しいですね。墨田区は、このロゴとステートメントから新しい時代の方向へとチェンジしていく。みんながそう感じるシンボルが生まれたように思っています。

「すみだモダン」の新しいブランドロゴマーク。

廣村:ありがとうございます。これからの町は産業と観光と生活が一緒に発展していくというのがスタンダードになるんじゃないかと感じています。" 職住一体" になって、新しい事業や面白いもの、あるいは伝統的なものも同時に歩きながら見られる町。墨田区はそのモデルケースになるような気がしていて、その先駆けとしてのこれからの10 年なのかなと思っています。

鹿島田:新しい「すみだモダン」の定義は、『ものづくりを通して、未来のスタンダードを創造し、人々の幸せを育む活動』としています。未来の人々にとって幸せとは何か。その起点となるものづくりを通した活動を区民と一緒になって取り組んでいく。この理念に共感していただける方に、積極的にロゴを使ってもらい、その一員であることを誇りとしてほしい。「すみだモダン」は「商品の認証」から「パートナーづくり」へ。多くの人々に愛される地域ブランドにしていけるよう、しっかりと舵取りをしていきたいと思っています。

廣村 正彰

1988 年廣村デザイン事務所設立。グラフィックデザインを中心に美術館や商業・教育施設などのCI・VI 計画、サインデザインなどを手掛ける。主な仕事に日本科学未来館・すみだ水族館・鉄道博物館など。

三井 浩・千賀子

1989 年三井広告事務所設立。広告・PR・イベントなどのコピーライティング・ディレクションを行う。2013 年に「すみだクリエイターズクラブ」を発足。墨田区を拠点にするクリエイターをつなげる活動も積極的に行っている。

鹿島田 和宏

墨田区役所の産業観光部長として地域の活性化に取り組む。これまで「すみだモダン」「すみだ北斎美術館」のスタートアップに関わる。地域の人たちと一緒に仕事をつくり上げていくことが、公務員としてのやりがい。

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