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持続可能性

エシカルに取り組む先進的な展示会「NEW ENERGY TOKYO」に出展!

2023.10.26
2023年度は今までにないほどのハイペースで「すみだモダン」の催事開催や展示会出展が続いている。コロナ禍が明けて、各所から引き合いがきていることに加え、対面で直接対話ができる展示会は「すみだモダン」を直接PRできる貴重な機会と位置付けているからだ。なかでも先進的な「NEW ENERGY TOKYO 2023」はチャレンジングな試みだった。出展を決めた理由とイベントの様子をレポートする。

「すみだモダン」として展示会に出展する理由

墨田区では、区内外の人々に向けて「ものづくりのまち すみだ」の魅力を発信し、墨田区の事業者を支援するため、「すみだモダン(*)」認証事業者に声をかけ、年に数回、墨田区として展示会に参加している。展示会は訪れたバイヤーや見込み客に実際に商品を手に取ってもらいながら、直接PRができる場。区としてもオフラインマーケティングの重要な施策と位置付けているからだ。

(*)「すみだモダン」/「未来への約束を果たす(持続可能性)」「知恵を集めて新しい価値を創る(共創性)」「粋な視点と遊び心を大切にする(独自性)」「様々な人の幸せなつながりを育む(多様性)」という理念のもと「ものづくりを通して、未来のスタンダードを創造し、人々の幸せを育む活動」だ。

2023年3月に墨田区の「コトモノミチ at TOKYO」で開催された「すみだモダン 2022 ブランド認証展」。
2022年12月に東京・立川市で行われたポップアップイベント「すみだDAY-LOCAL by すみだモダン」。
「すみだDAY-LOCAL by すみだモダン」のイベントパンフレット。

「コロナ禍ではそうした活動が一時できなくなっていたのですが、2022年あたりから徐々に引き合いがきはじめました」と墨田区産業振興課の児玉裕和さん。

その間、2021年に「すみだモダン」がリニューアルしたという情報は、展示会を主催する商業施設にも浸透していたため、時が経つにつれオファーが増えてきたという。

「行政は年間の予算が早くから決まってしまっているため、せっかく引き合いがきても2022年度はあまり動けず、やむをえずお断りをするケースが多くありました。2023年度は新しい『すみだモダン』の認知を深める目的もあり、早くから予算措置をしていたため、積極的に展示会への出展を続けています」

以前は3、4カ月に1回くらいの出展だったが、今年度は今までにないくらいのハイペースで出展が続いているという。

2023年8月に、丸の内のグッドデザインストアでで行われた「すみだモダン」のポップアップイベント。

「2023年の4月~6月は準備期間でしたが、7月の墨田区役所1階での展示から始まり、8月には丸の内のKITTE内にあるグッドデザインストア主催で『すみだモダン』のポップアップストアがオープン。同時期に代官山蔦屋書店(DAIKANYAMA T-SITE)でのフェアもありました。そして9月には新宿で開催された『NEW ENERGY TOKYO 2023』に出展、10月は千葉大学墨田キャンパスで行われる『WDO世界デザイン会議 東京2023』に参加。11月と12月にも商談会を予定しているなど、大小織り交ぜてさまざまな展示会への出展が決まっています」

2023年の夏休み時期に合わせて代官山蔦屋書店で行われた「すみだモダン」のポップアップコーナー。

大きな注目を集める展示会「NEW ENERGY TOKYO」

ここで、「NEW ENERGY TOKYO(以下ニューエナジー)」という展示会を初めて耳にされる方のためにご説明を。

「ニューエナジー」展は2022年9月から始まった展示会の注目株だ。毎年春と秋に開催される「東京インターナショナル・ギフト・ショー(以下ギフトショー)」とほぼ同時期に行われるため、この9月が3回目の開催となる。展示会名の「ニューエナジー」とは、人類が誕生してからさまざまなエネルギーが誕生してきたなかで、クリエイションも新しいひとつのエネルギーになりうるという思いからつけたものだという。

展示会「NEW ENERGY TOKYO」の会場。

新宿住友ビル(新宿区西新宿)の屋内施設「三角広場」で行われる展示会には、デザイン性が高くて高品質、そしてサステナブルな視点をもったモノも多く集まっている。ファッションやファッション雑貨、ライフスタイル雑貨、エシカル商品、ビューティー、フード、アートといったさまざまな分野で注目されるデザイナーやアーティスト、企業がジャンルを超えて集まり、多彩なクリエイションを表現する祭典だ。

ここでは従来型のB to Bの商談のみならず、一般来場者へのB to Cの販売も可能で、対面によるリアルなPRをしながらマーケットの反応を直接見極めることができるという点が大きな特徴となっている。

「まだ自治体の出展はあまりない展示会なのですが、2022年に墨田区として視察に行きました。そのときのトークショーにエシカルディレクターの坂口真生さんが出演されていたのがとても印象的でした(坂口さんは、2022年度の『すみだモダン』ブランド認証審査会の審査員も担当)。今後のマーケット動向を的確にとらえ、展示会のテーマやコンセプトがしっかりしていること、また『エシカル』という先進的な目線が、『すみだモダン』の取り組みともマッチするのではないか、と考え、出展を決断しました」と墨田区の児玉さんは話す。

「ニューエナジー」展を訪れるバイヤーや来場者の温度感も出展を決めた理由のひとつだ。日頃から感度の高いアンテナをもっており、「この展示会で出会うことができる繊細で美しく、豊かな創造性を享受しよう」と目的をもって訪れる人々には、「すみだモダン」のコンセプトや商品の良さが届きやすいのではないかと考えたためだ。

出展を決めた4社のブルーパートナー

「同時期に開催している『ギフトショー』はご存じのとおり、規模がものすごく大きくなっており、自治体による出展はもはや珍しいことではありません。それよりは『すみだモダン』の理念にも通じるようなコンセプトをもっている『ニューエナジー』展へ出展することで、新しい反応を見てみようという試みがありました。

「山野の恵を有効資源化し、自然環境に配慮した革の手入れ用品を製造する活動」として、2022年に「すみだモダン」にブランド認証された「サクラワクス」。認証商品「Leather-shampoo(柚子の香り、フローラル石鹸の香り)」が会場に展示された。

また、『すみだモダン』の認証事業者さんのなかには、すでに自分たちの力で企画して『ギフトショー』に出展している方も多くいらっしゃいます。行政がこうした展示会に出る理由は、あくまで事業者さんの自走につなげるためということもあり、『すみだモダン』として『ギフトショー』への出展は一定の役割を果たしたと考えています。今後も独自で『ギフトショー』に出展される事業者さんには、サポートもあります。事業者さんと『すみだモダン』は相互に連携し、『ギフトショー』では『すみだモダン』の一員としてのPRもしていただけたら嬉しく、引き続き後方支援をさせていただきたいと思います」

「革の端切れを活用した高い技術力とデザイン力による革靴の製造に関わる活動」として、2021年に「すみだモダン」にブランド認証された「ヒロカワ製靴」。「ベストオブすみだモダン ザ・ベスト(2020)」にも選ばれた商品「SPIDER」が展示された。

墨田区は、「ニューエナジー」展への出展は初の試みであるため成果は未知数としながらも、「すみだモダン」2021・2022にブランド認証された事業者の活動の紹介とそれに伴う商品の展示・販売を決めた。そして、この展示会に参加してみたい事業者がいれば、同じブースで実際に出展してもらおうと「すみだモダンブルーパートナー(*)」に打診。すると、サステナブルなカシミヤメーカーの「ホリゾン」、長く愛される鞄づくりと世界で一つだけのバッグ教室を開催する「大関鞄工房」、環境負荷の低減に努めて製造した長く着られるTシャツで知られる「久米繊維工業」、北海道で害獣駆除の対象となったエゾ鹿の脂を有効活用したレザーシャンプーの「サクラワクス」という4社が手を挙げ、「すみだモダン」ブースの一角でそれぞれ出展することとなった。

(*)「すみだモダンブルーパートナー」/「すみだモダン」として2021・2022年度にブランド認証された活動を実践する事業者で、区内の産業ブランドを共にPRする事業者。

テーマパークのような設えの「ニューエナジー」展

9月8日、開催中の「ニューエナジー」展を訪ね、出展中「すみだモダン」ブースを取材した。

天井が高く抜け感のある三角広場に、出現した架空の街。そこに近づくにつれてグルーヴ感のある音楽が聴こえてきた。正面の巨大なサイネージにはエシカルをテーマとしたメッセージ性の強いおしゃれな映像が流れている。入り口から中を覗くと、目の前にまっすぐな道路が延び、信号や看板の向こうに、海外でみた街のような4つのエリアが作られている。ちょっとしたテーマパークのような作りに、従来の展示会とはひと味ちがう工夫を感じ、期待が高まる。

4つのエリアは「NORTH」「EAST」「SOUTH」「WEST」という区画に分かれ、それぞれ以下のようなコンセプトで展示が行われているという。

「NORTH」:社会や地球に配慮することを念頭に掲げるブランドが集結し、未来への気づきと連鎖をテーマにしたエリア。

「EAST」:「今私に必要なものは何か? 」という問いかけのもと新しいウェルネスを体験ができるエリア。

「SOUTH」:「ファッションは時代を映す鏡」という考えのもと、哲学、情熱を発信するファッションエリア。

「WEST」:プロダクト、インテリア、アート、アウトドア、植物や花など、生活を彩るモノを集めたエリア。

「すみだモダン」のブースは「NORTH」エリアにあり、入ってすぐに目につく一等地にあった。床には「すみだモダン」のロゴマークを模した水の形のカーペットを設えるなど粋を感じるデザインだ。

この日の担当として会場に来ていた墨田区産業振興課の児玉さんによれば、主催者側との事前のミーティングにより「すみだモダン」の趣旨をよく理解してもらったからこそのブースデザインにつながったのだという。

エシカルの専門家たちからみた「すみだモダン」

「ニューエナジー」展の主催者であるブルーマーブルのキュレーター櫻井利信さんが墨田区との縁を振り返る。

ブルーマーブルのキュレーター櫻井利信さん。

「墨田区さんの活動はずっと拝見していました。過去に僕らがやっていた『rooms』という展示会で、東日本大震災の後に行った地場産業を復興するための展示会にご参加いただいたときからのご縁です。今回は新生『すみだモダン』としてさらにコンセプトをブラッシュアップされたということで僕らの展示会とのマッチングを考えていただき、事前にたくさんお話をさせていただきました。行政のこうした活動はたいてい3年くらいで担当者が変わってしまうため、継続が難しいものですが、10年以上続けられているというのはやっぱり素晴らしいと思います。

造作に関してはもっとたくさん作ることも可能だったのですが、展示会の会期である4日間のためだけにそれを作り、終わったらまたそれを壊してゴミを出してしまうことは、今回のコンセプトから外れていると考えました。そこでリユースできる素材を使ってブースを設計。僕らからのご提案というよりも、『すみだモダン』さんが求めていらっしゃる本質は、まさにそこだと感じていました」

「革の魅力を伝えながら、長く愛される鞄を作り続ける活動」として、2022年に「すみだモダン」にブランド認証された「大関鞄工房」。認証商品「世界で一つだけのショルダーバッグキット」などが会場に展示された。

この展示会を視察に来ていた「すみだ地域ブランド推進協議会」の理事長、水野誠一さん(IMA代表取締役)は次のように激励の言葉を述べた。

「僕は『すみだモダン』の立ち上げから今日まで、もう10年以上墨田区のプロジェクトに関わってきましたが、『エシカル』という視点を常に大切に考えて取り組んできました。その意味でもこの催事と『すみだモダン』は絶対にマッチングすると思います。今、洋服がどんどん使い捨ての時代になり、膨大な衣料ゴミも大きな社会問題になっています。ですが、『すみだモダン』で紹介しているブランド(事業者)は、それこそSDGsという言葉が誕生する遥か昔から社会や自然に寄り添ってものづくりをしてきています。そして10年、20年、30年と継承していけるようなブランドなので、そういう意味でも、自信をもって取り組んでほしいという思いでいます」

「すみだ地域ブランド推進協議会」の理事長、水野誠一さん(IMA代表取締役)。

事業者側による出展を決めた理由と実際に参加してみた感想

それでは実際に出展を決めた事業者はこの展示会をどのように感じているのだろうか。

久米繊維工業の参加のきっかけは、信頼している区の職員からの声がけだったことが大きいとしながらも、まったく新しい展示会に面白みを感じたことも理由のひとつだと専務取締役、久米秀幸さんは語った。

「すみだモダン」の 2010年のブランド認証商品、久米繊維工業のTシャツ「久米繊維謹製 色丸首」。久米繊維工業は「森のタンブラーとサステナブルなTシャツを活用した『美しい地球の保全』を訴求する活動」としても、2021年に「すみだモダン」にブランド認証された。

「墨田区さんにいろいろ機会をいただくなかで、僕たちも自分たちの名前を前に出していく事をはじめました。自社の商品を自分たちの屋号で責任をもってお客様に届けるということを始めてみて、最初に悩んだのはファッションという括りの中で僕たちの商品をお届けしていくのは正解なのか、ということでした。僕たちの商品は雑貨店やミュージアムショップ、空港や駅といったところにも置いてもらえる、隙間に入っていける商品なので、これまではあえて、さまざまなものが集まる『ギフトショー』に参加していました。日用品として満足してお使いいただけるTシャツとして、あるいは好きなコンテンツを胸に載せて着て歩けるようなメディアとして認知していただいた方が良いのではないか、ということを感じていたからです。対して『ニューエナジー』展はファッショナブルなイベントなのでとても新鮮です」

大量消費型のアパレル業界に厳しい目が向けられている今、長く愛用できるものを求める消費者も増えている。それに従いファッション業界にもベーシックなものに対する再評価が始まっているようだ。

「定番を作り続けることでノウハウが蓄積できますし、少しずつブラッシュアップしながら品質改良もできます。納得のいく作り方で納得のいく品質のものを買いやすくするという流れがファッション業界の中にも出てきました。そういったものを探されるお客様のために『商品を探す視点』をもったファッションのバイヤーさんと出会えるかもしれないというのは思いました」と久米さん。実際にそうした出会いもあったようだ。

「昨日来てくださったお客さんも、まったく面識のない方だったんですけれども、うちが出ているというのを調べてくださったようで、ピンポイントでここまでいらしてくださいました」

ホリゾンの脇田綾子さんは自分たちだけではなかなか出展まで思い至らなかったこの展示会に参加できたことがありがたかったと感謝を述べる。

「カシミヤヤギの飼育から製品までの一貫生産に関する活動」として、2021年に「すみだモダン」にブランド認証された「ホリゾン」。ホリゾンの脇田綾子さんは、会場で多くの方に活動と商品の魅力を伝えた。

「先進的な展示会なので、お声がけいただいたときに、『私たちでいいんでしょうか』っていうのはあったんですが(笑)、やってみないとわからないと手を挙げました。墨田区さんがいろいろと土台を作って、お声がけくださったことで、自分たちではなかなか出展まで思い至らない展示会だったり、なかなかリーチをかけられないお店とのご縁だったりをいただけて、すごく助けられています。『すみだモダン』という枠があって、そのフィロソフィーを墨田区さんが説明してくださるからこそ、我々も、その中のブランドのひとつという『立ち位置』でスムーズに、いろいろな方に受け入れていただいていることにとても感謝しています」

「ものづくりのまち」の認知とその先

会場には先述のエシカルディレクター坂口真生さんも訪れていた。坂口さんは2022年度の「すみだモダン」ブランド認証審査会の審査員を務めているということもあり、区内の事業者に向けてこうしたイベントに参加することで得られるメリットを教えてくれた。

エシカルディレクター坂口真生さん。

「このイベントに出ると、とにかくいろいろな方と出会うことができます。バイヤーさんだけでなく、周りの出展者さんたちとも直接話して交流することで、こういうやり方でやっていこうという具体的なアイデアがその場で生まれてくるのです。また、イベントには時代感が如実に出るものなので、『今はこういう感じなんだ』という空気を体感できます。出展者であれ来場者であれ、誰にとっても学びがあると思います。また、そういった経験は今後の事業活動においても、とても大きな財産になると思います」

「すみだモダン」との括りとは別に独自で「ニューエナジー」展の「SOUTH」エリア(ファッション)に出展していたのは墨田区の事業者「10YC」だ。同社は「着る人も作る人も豊かに」という理念のもと、「10年着たいと思える服」づくりをしている。製造原価を公開し店舗をもたずにECのみの展開で人気を博しているブランドだ。

10YCの下田将太さん。

ひと足先にこのイベントの放つ時代の空気を体感していた代表取締役の下田将太さんは参加した感想を次のように語ってくれた。「ずっと『直販』でやってきた我々のブランド『10YC』ですが、『ニューエナジー』展はアーティストやクリエイターの方がたくさん集まる機会だと聞き、そういった方とのコラボレーションや、新しい一面を見せることにつながればと思い出展しました」。実際に参加してみて、出展者同士のつながりもできたといい、来場者から直接話が聞けるなど、そのメリットを存分に感じているようだった。

墨田区がこうした展示会へ出展する理由は「すみだモダン」認証事業者へのサポートのほか、展示会に来てくれた方に、「墨田区はものづくりのまちで、クリエイターが集まってくるところ。他の事業者とも関わりがもちやすそうなので、ここに来たら楽しいものづくりができるかもしれない」という印象をもってもらいたいという狙いもある。こうして魅力を伝えることが事業者の誘致につながり、ゆくゆくは墨田区の産業を盛り上げることになると考え、地道な出展をひとつひとつ続けているのだ。

今回「ニューエナジー」展に参加した久米繊維工業の久米秀幸さんによれば、その活動の実りを感じたシーンがあったという。

「ブースに立っていると、通りがかりに『墨田区って、ものづくりのまちなんだよね』と言いながら歩いていかれる方が結構いらっしゃいました。墨田区の認知度がすごく上がっていることを実感した瞬間です。これこそ『墨田区』『すみだモダン』として、地域のみんなで一緒につくってきたブランドの力なんだと、とても感慨深かったです」

少しずつ手応えを感じ始めた展示会への出展。墨田区、そして「すみだモダン」としては、今後も精力的に出展を続けていく予定だ。

Text: Masami Watanabe
Photo: Sohei Kabe
Edit: Chiaki Kasuga / Hearst Fujingaho
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