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構想

発表!「すみだモダン2024」ブランド認証式リポート

2025.02.25
未来のスタンダードを創造し、人々の幸せを育む「活動」とそれに関連する「商品」をブランド認証する「すみだモダン」。2024年度は5事業者による5つの活動がブランド認証され、2024年12月23日(月)に墨田区産業共創施設「SUMIDA INNOVATION CORE」で認証式が行われた。その様子と、「すみだモダンブルーパートナー」となった各事業者の活動内容を紹介する。
ブランド認証式に山本亨墨田区長(前列左から4番目)をはじめ6名の審査員が出席。IMA代表取締役・水野誠一氏(理事長兼審査員、前列右から3番目)、GKデザイン機構 代表取締役社長・田中一雄氏(副理事長兼審査員長、前列左から3番目)、東京東信用金庫 理事長・中田清史氏(理事兼審査員、前列右から2番目)、MASAMI DESIGN代表取締役・髙橋正実氏(審査員、前列左から2番目)、国立大学法人 千葉大学教授、デザイン・リサーチ・インスティテュート センター長・植田憲氏(審査員、前列右から1番目)、墨田区産業観光部部長・郡司剛英(理事兼審査員、前列左から1番目)。後列は、ブランド認証を受けた事業者の皆さん。

3回目となる「すみだモダン」の認証式

墨田区は、江戸時代から続く「ものづくりのまち」。区は2009年の東京スカイツリー®誘致決定をきっかけに、墨田区の認知度を高め、その産業ブランド力を国内外にPRするため「すみだ地域ブランド戦略」を開始。区内の価値ある商品や飲食店メニューをブランド認証してきた。

2021年にはその認証を「商品そのもの」から、商品開発のバックグラウンドにある各事業者の「活動」に光をあてるプロモーションへとリニューアル。「すみだモダン」のブランド認証は、公募により集まった区内事業者の活動内容を、外部有識者による審査会で厳正に審査して決定する。

審査の基準は「すみだモダン」の理念との合致度。それは未来への約束を果たす「持続可能性」、知恵を集めて新しい価値を創る「共創性」、粋な視点と遊び心を大切にする「独自性」、様々な人の幸せなつながりを育む「多様性」という4つの理念だ。

ブランド認証された活動を行う事業者は「すみだモダンブルーパートナー」として認定され、専用のロゴマークが使えるようになるほか、区が実施する展示会や各種の広報媒体で優先的な取り扱いを受けられるという利点がある。同時に墨田区とともに区内の産業を盛り上げ、ものづくりのまちとしてのブランドの向上を行っていく役割も担う。

活動がブランド認証された「すみだモダン ブルーパートナー」のみが使える専用のロゴマーク。

2024年度の「すみだモダン」は7月から9月にかけて公募され、5事業者による5つの活動が認証を受けた。12月23日に行われた認証式には各事業者の代表者以外にも、認証を受けた活動に実際に携わってきたメンバーも参加し、会場内はプロジェクトに関わった全員が喜びを分かち合う、晴れやかで和やかな空気に包まれた。

「すみだモダン2024」認証活動と事業者名

事業者名/有限会社芝崎合金鋳造所

https://www.rbrass.com/

認証活動名
「真鍮鋳物を扱うブランド『R Brass』の展開で砂型鋳造という技術を次世代に継承する活動」

認証活動概要
区内でも希少となった砂型鋳造の技術と製品の魅力を、真鍮鋳物を扱うブランド「R Brass(アールブラス)」を通じて伝える活動。砂型鋳物の製造工程で使用される砂や真鍮端材は再利用が可能であり、高い循環性も有している。すみだ水族館の飼育スタッフ協力のもと、TOTO 株式会社と共同開発した “御守りのようなオブジェ「人鳥願具(ペンギンがんぐ)」” を開発するなど、砂型鋳物特有のテクスチャーを生かした製品開発にも取り組み、その技術を継承している。

認証商品名
「御守りのようなオブジェ『人鳥願具(ペンギンがんぐ)』×3種 ①ファーストペンギン ②じつは怒っているペンギン ③愛情いっぱい仲良しペンギン」

事業者名/特定非営利活動法人あそび研究会

https://asobiken.org/

認証活動名
「墨田区の町工場から提供された多種多様な素材を使ってこどもの主体的な遊び場『あそび大学』を展開する活動」

認証活動概要
区内の町工場から提供される様々な素材を用いて、こどもが自由に遊べる環境を展開する「あそび大学」。多様な製造業が集積する墨田区の特性を活かした取り組みであり、自主性や創造力、そして地域への愛情を育むことをめざしている。NPO法人、大学、デザイナーが連携して生まれたこのプロジェクトには2021 年のスタート以来、延べ4000 名以上のこどもたちが参加。2024 年には「キッズデザイン賞最優秀賞(内閣総理大臣賞)」を受賞している。

事業者名/有限会社竹内製作所

http://gl-tk.com/

認証活動名
「実験用ガラス製品メーカーによる耐熱硝子素材の特性を活かした日用品を開発する活動」


認証活動概要
理化学実験用等で使用されている耐熱硝子でフラスコや試験管等を製造してきた竹内製作所が、耐熱硝子素材の魅力と可能性を、自社開発の日用品を通じて伝える活動。ガラス本来の美しさを有し、修理可能な特性を持ったガラスペンなどの日用品を自社ブランド「clarto(クラルト)」で展開している。耐熱硝子の加工を手作業で行う同社の技術は、全国的にも希少性が高い。書店等と協働した商品開発にも取り組むほか、区内事業者とも連携し、すみだの地場産業であるガラス産業の魅力を広く伝えている。

認証商品名
「clarto ガラスペン acari(白・黄・青・赤・黒)」

事業者名/株式会社石井精工

http://ishiiseikou.com/

認証活動名
「既存製品を自社の技術を通して見立て直し新たな価値を創造する活動」

認証活動概要
古いものや使い捨てされていた物事を、自社の技術を通して新しい価値へと見立て直すブランド「MITATE(みたて)」。その第一弾は“割り箸”に着目している。ゴム金型の設計・製造技術を生かした金属の嵌め合い(はめあい)により、割り箸を割るときのパキッとした感覚を再現。ユーモアも感じられる使い捨てしない割り箸を実現した。MITATE プロジェクトは他の区内事業者とも連携し、高い製造技術を応用した新たな価値を提案し続ける。

認証商品名
「MITATE 金属の割り箸」

事業者名/東商ゴム工業株式会社

https://toshorubber.jp/

認証活動名
「廃棄物から新たなゴム素材を開発しゴムの未来性と独自技術をSample Book で伝える活動」

認証活動概要
ゴムローラーを製造する際、毎月約500 ㎏発生する研磨粉という産業廃棄物。東商ゴム工業はこの廃棄物を、独自の再生ゴム素材として開発することに成功し、引き続き開発を進めている。さらに、自由に手軽に成形できるオリジナル素材の開発など、ゴム素材の未来を開拓していくパイオニア的存在である。創業60 年における自社技術とゴム素材の魅力・可能性を伝えるためにデザイン性の高いSample Book を製作。本社にラボカフェという交流拠点を開設するなど「ゴムのコンサルタント」として、業界の未来へと貢献している。

山本亨墨田区長による挨拶

認証式は、「すみだ地域ブランド推進協議会」南部友孝事務局次長(墨田区産業振興課)による開会の辞でスタート。最初に山本亨墨田区長からの挨拶があった。

「本日『すみだモダン2024』として5つの活動と関連商品がお披露目となりました。いずれも墨田区のものづくりのブランド力向上にふさわしいものが選ばれたと思います。認証を受けられた皆様には心からお祝い申し上げます。誠におめでとうございます。この取り組みは大変歴史も長く、今の形になっても引き続き審査員の方々にご指導、ご審査をいただいているということで、審査員の方々にも厚く御礼を申し上げます。今回認証された新たな関連商品と活動は2025 年2月14日から16日まで、国立代々木競技場 第一体育館で開催される展示会『NEW ENERGY TOKYO』に『すみだモダン』として出展いたします。

3月には業平の『コトモノミチ』での展示販売も行わせていただきます(※1)。今後、区といたしましても積極的に事業者の皆さんの販路拡大、そして何よりも、こうして選ばれたということは皆さんの活動に素晴らしいものがあるということで、区としてもしっかりと情報発信していきたいと考えています。また、そうしたことが墨田区のシティプロモーションにつながっていけば、我々にとりましても大変ありがたく幸いなことだと思っております。

本日はここ『SUMIDA INNOVATION CORE』を会場とさせていただきました。ここは、すみだのものづくりと連携しながら何かを興したいというスタートアップ事業者の皆様を支援する施設です。『人つながる墨田区』でありますから、ぜひこのスタートアップの皆様と、墨田区のものづくりの技術をもつ皆様とがかけ合わさって、さらなる良い活動や、共創による社会課題の解決につながるよう、ご協力いただけましたら幸いです。

また、墨田区はデザインによって生かされているところがございます。昨年の世界デザイン会議から田中理事にもお力添えをいただき先日台湾に行ってまいりました。そして台湾デザイン研究院の皆様と、墨田区内にサテライトキャンパスをもつ千葉大学デザイン・リサーチ・インスティテュートの知見を生かして、墨田区発で海外にもさまざまな発信をしていきたいと思っていますので、本日認証された事業者の皆様にもご協力いただけましたら幸いです。結びに、全ての皆様方に感謝申し上げるとともに冒頭、私からのご挨拶とさせていただきます。本日は誠におめでとうございました」

※1/活動と同時に認証された商品は2025年1月16日〜2月19日、GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA KITTE 丸の内店と3月1日~3月31日、 coto mono michi at TOKYO にて販売。

水野誠一理事長による祝辞

続いては「すみだ地域ブランド推進協議会」理事長で「すみだモダンブランド認証審査会」審査員の水野誠一氏(株式会社IMA代表取締役)の祝辞だ。

「さきほど山本区長から、心のこもったご紹介をいただきましたが、この活動自体は2009年にスタートいたしました。前区長の山崎昇さんが私のところに来て『墨田区のブランディングをしていきたい、世界に発信していきたい』というご相談をいただきました。ちょうどそのときは地方自治体のブランディングが盛んになり始めた頃でしたから、私は『そうしたことをしても、どの自治体も大抵は2、3年で終わってしまいます。それでは残念なのでぜひ10年続けてください』とはっきりとお願いしたことを今でも覚えております。実際にそれが実現し、山本区長になっても引き継がれて大きく育ってまいりました。

2021年からは、持続可能性、共創性、独自性、多様性という21世紀を代表する考え方を通じて未来のスタンダードを創造していく、というテーマでやっております。皆さんご存じのように、現代はモノがあふれている時代ではありますが、そのあふれているモノのなかで、本当に発信性をもち、21世紀に認めていただける商品、あるいは活動というものはそう多くはありません。歴史あるすみだのまちが、新しいまちになるために、こうした活動は不可欠です。本日の会場となったこの建物を、宇宙ゴミの問題をいかにして解決するかを目的として設立された『アストロスケール』さんが本社として使っておられるというのも、非常に象徴的なことであると思います。まさに『すみだモダン』を21世紀に発信していくためには、本日認証された皆様の力を大いに活かしながら展開させていただくことが大事であると我々関係者一同考えているところです。本日認証された皆様おめでとうございます。これからぜひ我々とともに21 世紀に向けてその活動を活発化していただきたいと、そのお手伝いができれば幸いだと思っております」

厳しい審査で絞り込まれた今年度の認証

その後は「すみだ地域ブランド推進協議会」理事および「すみだモダンブランド認証審査会」審査員の紹介、「すみだモダンブランド認証」事業概要と認証の経緯の説明が行われた。今回の認証活動(および商品)の発表に続いては認証盾の授与だ。代表者は有限会社芝崎合金鋳造所の芝崎竜太さん。

水野理事長から贈られた盾は、「すみだモダン」の新たな理念をふまえて、廣村デザイン事務所と「すみだ地域ブランド推進協議会」の廣田理事の協力により完成した特別なもの。素材には人の手の温もりが感じられるよう和紙を採用している。手すきにより和紙の端の耳の形状が一枚一枚異なるため、印刷時の位置決めには細心の注意を払い、表面の毛羽立ちによって汚れのつくことがないよう、丁寧に仕上げられた唯一無二の味わいが自慢だ。

「すみだ地域ブランド推進協議会」副理事長および「すみだモダンブランド認証審査会」審査員長の田中一雄氏(株式会社GKデザイン機構 代表取締役社長)は今年度の認証について次のように述べた。

「すみだモダンブランド認証」審査員長の田中一雄氏

「今年度の認証点数が少ないことについては、かなりの議論がありましたが、これは『すみだモダン』のブランドとしての価値を大事にしていこう、という選択の表れでした。そのため厳選された認証数になっております。今の世の中にある企業やNPOを含めた活動体のなかで、この活動が今日の価値に合っているかどうか、それが一番大きなポイントであったと思います。そこをクリアしていれば、墨田区やこれからの社会をつくっていくための方向性を示すブランド性をもっているということにつながるのです。そこには商品認証も含まれております。商品をもっておられる事業者に関しては、これまで積み重ねてきた『すみだモダン』のブランドの価値というものの上に審査をされて認証を受けられている、ということを私の方からひと言申し添えておきます。本日は誠におめでとうございました」

各審査員による今年度の認証についての審査評

「すみだモダン2024」は8名の認証審査員(すみだ地域ブランド推進協議会理事/すみだモダンブランド認証審査会外部招聘審査員)により決定した(※2)。認証式に出席した審査員の評をお伝えする。

※2/廣田尚子氏(有限会社ヒロタデザインスタジオ 代表取締役)と坂口真生氏(GENERATION TIME株式会社 代表取締役)は所用により欠席。

植田憲審査員(国立大学法人 千葉大学教授/デザイン・リサーチ・インスティテュートセンター長)

「ただ美しいものを作って売ればいいという話では決してなく、独創性はもとより、共創性や持続可能性といった非常に今日的、未来的な理念を担保しての認証ということで、とても感銘を受けております。皆様がそうしたブランドに認証されたというのは大変おめでたいということとともに、これからすみだのまちづくりを活性化していくリーダーとして活躍していただける皆様なのかなと考えているところです。私どもも2021年にここ墨田区にサテライトキャンパスを開校し、そろそろ4年が経とうとしておりますが、このすみだの暮らしをよりよくするために、これからも皆様と一緒に何かをして、自分たちのデザイン領域でも新たなデザイン形成をしていきたいと思います。本日は大変栄えある認証ということで、皆様おめでとうございます」

髙橋正実審査員(MASAMI DESIGN代表取締役)

「今回、非常に厳選されたなかで認証を受けられた皆様の活動は、ここ墨田区を発祥の地とした産業やものごとが多く、皆様は、その歴史や積み重ねを未来へつなげ、飛躍させる力をお持ちの方々だと思います。ここを地元として生まれ育ちました私自身は墨田区の過去や現在、未来を思うとき、皆様が信頼を積み重ねてこられたからこそ、日本や世界で必要とされ、今この場で皆さんが集結している意味があるのだと思っております。この地域に脈々と息づいてきたことが活動として人々の活力や社会とつながり未来を創造していくことを願っています。今日ここでの認証をきっかけに、ぜひ世界ですみだの産業の歴史を皆さんの行動から知っていただき、産業における世界でも類を見ない歴史を辿ってもらいながら、総合的にともにすみだを活性化させ、地域全体の見える化につながっていけたらよいなと思っています。皆様のご活躍を期待しております。おめでとうございました」

中田清史理事/審査員(東京東信用金庫 理事長)

「どの企業の皆さんの活動も『すみだモダン』の定義にふさわしい活動と興味深い製品でした。本来廃棄されるものを再利用したり、新たな価値づけを加えたりした『サーキュラーエコノミー(循環型経済)』を実践している企業の皆さんが多かったと思っております。大企業が得意とするような手頃な価格の量産品とは違う、自社の技術とアイデアを駆使した価値の高い製品を提案することが中小製造業の競争力の強化につながるということを改めて実感いたしました。加えまして、町工場から提供された多種多様な素材を使って子どもの主体性を育む『あそび大学』という活動を行っている『あそび研究会』さんは、回数を重ねるにつれて町工場だけではなく、千葉大学や行政とも連携し、活動の輪を広げておられます。『キッズデザイン賞』の最優秀賞も受賞され、教育面でも高く評価されている素晴らしい取り組みです。この墨田区において、皆さんが素晴らしい活動をされていることを誇らしく思います。『すみだモダン』の認証を受けた活動や製品を、未来へつなげていただくとともに、国内はもちろん、世界に向けてさまざまな手段でアピールすることによって、他の企業への波及や新たな事業の創出、さらなる地域経済の活性化につながっていくことを願っています。今後ますますのご活躍を祈念いたします。本日は誠におめでとうございました」

郡司剛英理事/審査員(墨田区役所産業観光部 部長)

「私は行政の人間ですので、立ち位置は明確でございます。それは地場産業を守り、育み、そして発展させることですので、そういった視点からこの審査に参画させていただいております。私が前回この場にいたのは今から7、8年前です。当時は第一期の『すみだモダン』で、キーコンセプトは『あたらしくある。なつかしくある。』だったんですね。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、商品というものにスポットを当て、そこに新しさがあるのか、あるいは懐かしさがあって伝統的なものの上に立っている本物かどうか、を主な審査基準にさせていただいておりました。その後コロナがやってきまして、その間はどういう形でこのコンセプトを持続可能なものにしていくのかを理事会や審査会の内部で話し合いました。その結果、今の新しいコンセプトである『こころ、ゆさぶる。』という持続可能であり、社会的に意義のある活動を認証しようというものになってまいりました。この形になってから3年目を迎えた今回の『すみだモダン』認証が、企業の活動、あるいはそれぞれのグループの活動を支援する励みとなっていければ、私たちとしては幸いでございます。本日は誠におめでとうございます」

議論が深まったことで再認識された「すみだモダン」の価値

最後に、水野理事長から、審査過程における、議論や発見についても言葉をいただいた。

「すみだ地域ブランド推進協議会」理事長の水野誠一氏

「こうした審査は何年もやっていくと、こんなもんだろうと言ってその流れに従ってしまうことがよくあるのですが、今回の審査会は、賛否両論に分かれたり、賛成ではあるけれどそれに条件をつけたりと、本当に活発なディスカッションがありました。そんなふうに慎重な議論を重ねて今回の5つの活動そして商品が選ばれたのです。今回の審査では、活動なのかモノなのか、という議論が非常に深まってきた印象があります。

モノというのは結果でしかなく、あるいはその背後にある精神や、皆さんの愛情、情熱がそのモノに表れたり、活動として認識されたりということになる。『あたらしくある。なつかしくある。』が『すみだモダン』が生まれたときの基本コンセプトでした。かつての審査でも歴史の現代化をやっていかなければ審査員として、あるいは皆様とともにお手伝いをするコラボレーターとしての役割はないということを重要だと考えておりました。単に歴史的にいいものを選ぶだけではなくて、そこにデザイン性や知恵を加えて現代化していくと、今の時代に通用するものへとさらに高めることができる。こういった活動があって初めて『すみだモダン』が生きてくる、という考え方が整理された3回目の認証であったと感じております。

認証されたから終わり、ではなくて、その認証された活動や商品が時代に合ったものとしてさらに高まっていけるよう、皆様にも頑張っていただきたいですし、私たちもできる限り、そのお手伝いをしたいと考えております。優れた審査員の方々が集まって、本気になって議論を深めた結果が今日の認証発表になっていると思います。これから皆さんと一緒に『すみだモダン』を世界に発信させていきたいと考えておりますので、どうかご協力をお願いいたします。認証事業者の皆様、本当に本日はおめでとうございます。頑張りましょう」

認証事業者が感じた認証の喜びと今後の活動に対する展望

記念撮影のあとで認証事業者に認証の感想を伺った。特定非営利活動法人あそび研究会の須藤昌俊さん(一般社団法人SSK「墨田青年協力会」会長)は、次のように話す。

「実は、『あそび大学』に素材を提供してくださる町工場の方々がすでに『すみだモダン』をとっておられて、今後何かをやっていくうえで君たちも『すみだモダン』をとっておけば、いろいろな連携ができるのではないか、と教えていただいたのが応募のきっかけです」と須藤さん。

「足掛け3年この活動をしてきたのですが、今年は『キッズデザイン賞』の最優秀賞である内閣総理大臣賞や、『すみだモダン』の認証をいただいたことで、ようやく公的にも認められたんだと実感が湧いてきました。それが今、いちばんうれしく思っていることです。私たちの活動の根本に、こどもたちの遊び環境がすごく窮屈になってきているという現状をなんとかしたいというのがありました。

こどもたちがさまざまな素材を使って自由にのびのびと遊べるように、町工場から出た廃材を直接届けるというこの取り組みを、自分たちだけではなく、区内の保育園や児童館といったこどもたちに関わる仕事をする人たちを巻き込んで、仲間をどんどん広げながら、さらに大きな動きにしていきたいです。ゆくゆくは、すみだのこどもたちみんなが、町工場の素材を使って遊んだことがある、となってほしいです。すみだにはこんなに町工場があって、なんだか楽しい場所なんだという、墨田区への愛着を持つこどもをどんどん育てていきたいなと思います」

特定非営利活動法人あそび研究会の須藤昌俊さん(写真左から2番目)。

芝崎合金鋳造所の芝崎竜太さん。

有限会社芝崎合金鋳造所代表取締役の芝崎竜太さんにも感想を伺った。

「実はこの和紙の認証盾が欲しかったんです」と冗談めかして認証の感想を語ってくれた。ようやくもらうことができた「すみだモダンブランド認証」について、「やっぱり気持ちが入りますね。今までは日のあたらないところで、自分が食べていくためにやっていた仕事ですが、こうして認証していただくと、皆が見ていてくれたんだなと責任感が増す感じです」と襟を正した。「誰も気づかないところで産業の灯火が消えていってしまうというのは、結構あることだと思うんです。でも、こうやって見てくださっている方がいるから、絶対次につなげなきゃという気持ちが強くなりました。需要自体が減っているので、鋳物屋さんが減っていくことは仕方がないことです。工業製品がゼロになることはないと思いつつも、やはり工芸品のほうに少しずつシフトしていかないと生き残れないのではないかという危機感はあるので、今後もいろいろな方と相談しながら、デザイン面でもご協力いただきつつ、一つひとつ品物が増えていけばいいなと思っています。本日はありがとうございました」

Text: Masami Watanabe
Photo: Sohei Kabe
Edit: Katsuhiko Nishimaki / Hearst Fujingaho
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