sustainable
持続可能性

ホリゾン―― “顔の見える”カシミヤづくり

2022.12.20
2021年に刊行した書籍『すみだモダン 手仕事から宇宙開発まで、"最先端の下町"のつくり方。』より、一部のコンテンツをご紹介。墨田区の多くの「作り手」に密着した内容より、カシミヤ商品製造の「ホリゾン」を取材した記事をお届けする。

内モンゴルの牧地から誰かの暮らしへ

ホリゾンは内モンゴルの草原でカシミヤヤギを育て、紡績から製品まで一貫して自社生産するカシミヤカンパニー。ストールやマフラー、ニットなど、手掛ける製品はどれもカシミヤならではのふわふわした肌触りで、頬ずりしたくなるほど。

社員スタッフはみな「カシミヤを愛しすぎている」と自称する面々。同社の取り組みを知れば、それが決して誇張ではなく、心からの言葉なのだということがよく分かる。

柔らかく、しっとりした質感のストール。植物(チーゼル)を使った波付け(起毛)加工を行い、ふわふわなタッチでも毛玉ができにくいよう計算している。

言うなれば「牧地 to カスタマー」。ホリゾンでは生産地である内モンゴル自治区に約3000万㎡の自社牧場を開牧。地元の牧民と一緒に約2700頭ものカシミヤヤギを飼育している。

かつてモンゴルの多くの牧民がカシミヤヤギを飼育していたが、時代の移ろいとともに草原を受け継ぐ人が減少。同社は自社牧場を開放し、ともに飼育をすることで、安定的な原料調達を実現するとともに、飼育に関わる人材を現地雇用するなど、経済基盤の安定化にも取り組んでいる。

「1頭のカシミヤヤギから取れる原料は100〜150gほど。厳しい自然環境のなかで、人の手で育て、人の手で採取されるカシミヤヤギの毛は、自然から授かった貴重な資源です。だからこそ高品質な原料を適正な価格で買い、消費者に届ける責任があるのです」

草原からの明確なトレーサビリティにこだわり抜くのは、ホリゾンで働く人たちが原料生産の苦労とありがたさを身にしみて知っているからだ。

広大な牧地でのびのびと暮らすカシミヤヤギ。ヤギのストレス軽減だけではなく、気候変動による牧地や土壌の変化もモニタリングし、あらゆる面で持続可能なカシミヤ毛の生産方法を模索している。

かつてカシミヤ業界では中間流通業者による不透明な取り引きによって価格が高騰したり、産地がはっきりしない偽カシミヤが出回るといった問題が頻発していた。こうしたことを避けるため、ホリゾンでは現地政府から認定を受け、現地の生産者から直接、適正な価格で原料を受け取るフェアトレードも徹底している。

現在もカシミヤヤギの飼育で生計を立てている生産者たちをパートナーと考え、ともにクリーンで公正なカシミヤ生産の道を切り拓いてきた。

近年は自社の牧場でカシミヤヤギがストレスなく過ごせ、十分に飼料を供給できる牧地の面積と飼育頭数を検証したり、牧草や土壌と気候変動の関係などを調査・研究するプロジェクトも開始。現地の生産者にも情報を共有し、持続可能な生産のあり方を模索している。

内モンゴルの工場では約600人のスタッフが働く。

牧地で採取した毛は自社の現地工場に運ばれ、整毛・紡績・製造・仕上げから検品と、すべて一貫して行っている。

自分たちが扱う原料がどんな場所で、どんなふうにつくられ、どういう工程を経て製品になっているのか。

それを熟知できるのは、原料調達から製造までを自社で行っているからこそ。そして、生産に関する一切を知るというのは、自分が扱う商品に責任を持つということにもつながる。

速度の遅い織り機を使うことで糸にかかる負担を軽減し、柔らかく織る。

ホリゾンではOEMやオーダーメイドでは依頼主が目指す商品ターゲットを聞いたうえで、それに最も適した糸番手や仕上げ方法を提案し、コスト面でもベストな道を探る。

また「敏感肌なら肉厚の糸番手がいい」など、常にきめ細かなアドバイスを忘れない。

内モンゴルの牧地からつながる生産者からのバトンをしっかりとつないでいきたい。その強い想いが、ホリゾンのものづくりとサービスに表れている。

「自然からの贈り物であるカシミヤを余すところなく楽しんでもらいたい」。その実直な想いが、どこまでも柔らかく、優しいカシミヤアイテムをつくっているのだ。

Company Data
ホリゾンHorizon inc.
ADDRESS: 東京都墨田区京島1-27-9
TEL: 03-6231-9518
HP: https://www.horizon-inc.jp/
Text: Yuriko Kobayashi
Cooperation: Hearst Fujingaho
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