観光都市としての可能性は、ものづくり文化にあり
"すみだのものづくり"の一番の特徴・魅力は、江戸時代より庶民の生活に必要なもの、生活雑貨というなかで育まれた伝統工芸が現在に引き継がれているという点です。同じものづくりが伝わる地域でも京都や石川のような華美で非日常を彩る工芸品とは違った立ち位置のものです。
そうした伝統を残しつつ、近年は若手スタートアップと協働して革新的なものづくりをするガレージスミダや、宇宙ゴミ除去の技術を開発するアストロスケールなど、新しい領域に挑戦する企業も増えています。古きよき“すみだのものづくり”と「今」のイノベーティブなものづくり。この両方が互いによい影響を与えながら育っていることこそが墨田区の魅力であり、そこにこそ魅力ある観光都市としての可能性があると考えています。
すみだの魅力を体感する「まち歩きツアー」
観光協会では東京スカイツリーの開業以来、約10年間、そうした墨田区の町の魅力を体感してもらうための「まち歩きツアー」を開催してきました。顕著に数が増えたのは中学・高校の修学旅行です。特徴は東京スカイツリーから浅草、東京ディズニーランドへという従来の観光地をただめぐるツアーではなく、木目込人形の鞠をつくったり、老舗の屏風店で手仕事に挑戦したり、「体験」を楽しむツアープランです。
昔ながらの銭湯や商店街でのお仕事体験なども人気です。墨田区の場合は職人さんがそこに住んでいますので、アシスタントからではなく、親方本人から手ほどきを受けられます。、"生の伝統"を感じられるというのが、全国から修学旅行生が集まる理由なのかもしれません。
そうした事例を受けて、今後、観光協会で光を当てていきたいのが"すみだのものづくり文化"の核心である町工場。山口産業のような革なめし工場や、江戸切子の伝統を伝える廣田硝子など、作業の様子をただ見せるだけではなく、なぜその産業が墨田区で興って今につながっているのか、未来に向けてどういう取り組みをしているのか、そういう部分まで知ることで、「墨田区って面白い町だね」と思ってほしい。それこそが観光協会が掲げる観光のキャッチフレーズ"本物が生きる街すみだ"を見る、感じることにつながるのだと思います。
区民参加型のイベントでさらに観光の魅力が活性化
もうひとつ、今後の墨田区の観光において非常に重要だと考えているのが区民のみなさんの力です。この10年、区民ボランティアが運営する「すみだストリートジャズフェスティバル」や、地元のクリエイターでつくる「すみだクリエイターズクラブ」が主催する「すみだ川ものコト市」など、民間の有志で開催するイベントが墨田区を盛り上げています。町工場を一般公開する工場見学イベント「スミファ」もそのひとつです。
区民のみなさんが墨田区の魅力を知り、それを伝えようとする動きはシビックプライドを醸成させ、さらに魅力を深めていく。そんないい循環が起こっている"こと"をひしひしと感じます。それは老舗の銭湯を若手が引き継いだり、区外から転入して飲食店を開いたり、そうした新しいカルチャーを形づくる、大きな支えになっていることは間違いありません。
墨田区は東京23区のなかでもコンパクトで、人と人、行政と区民とがつながりやすい町。行政と区民が一緒にまちづくりをしていけば、本当の意味での"本物が生きる街"をつくっていけるはずだと確信しています。
Cooperation: Hearst Fujingaho